AIを使いこなす鍵はプロンプトより「言語化」 — 自分で説明できない仕事は、AIにも人にも頼めない
「AIに聞いても、思ったような答えが返ってこない」。この相談を受けたとき、まず画面ではなく、その人に質問します。「その仕事、新しく入った人に頼むとしたら、どう説明しますか」。ここで言葉に詰まる場合、原因はプロンプトの書き方ではありません。
この記事で言いたいことは1つです。AIを使いこなすためにプロンプトの技術は役に立ちますが、その手前にある「言語化」のほうがはるかに大事です。自分の中で説明できないことは、AIにも人にも実現できません。逆に、説明できることは実現しやすい。
AIに頼むことと、人に頼むことは同じ
AIへの指示は、人への依頼と構造が同じです。何をしてほしいか、なぜそれが必要か、どういう状態になれば完了か、何をやってはいけないか。これを伝えないと、人でもAIでも、それらしいが違うものが返ってきます。
人に頼む場合、相手が質問してくれたり、御社の事情を知っていたりするので、説明が足りなくても何とかなることがあります。AIは御社の事情を知りません。だから、説明の足りなさがそのまま結果に出ます。AIで結果が出ないのは、AIの能力の問題ではなく、依頼の解像度が可視化されただけ、というケースがよくあります。
説明できない仕事は、誰にも実現できない
「ベテランが見れば分かる」「感覚でやっている」「ケースバイケース」。こう表現される仕事は、AIに頼んでも結果が出ません。ただ、それは同時に、新しい社員にも外注先にも頼めない仕事です。その人が休んだら止まる仕事でもあります。
つまり、AIで結果が出ない仕事の一覧は、そのまま属人化している仕事の一覧です。AIを試すことは、社内のどの仕事が言語化されていないかをあぶり出す作業でもあります。ここで「AIは使えない」と結論を出すのはもったいない。見つかったのは、AIの限界ではなく、言語化されていない仕事です。
説明できるものは、実現しやすい
逆に、言葉で説明できる仕事は、AIでも人でも実現しやすくなります。たとえば「問い合わせに返信する」ではなく、次のように言えるかどうかです。
- 目的: 問い合わせの一次返信を、当日中に返す
- 入力: 問い合わせメールの本文と、過去の似た問い合わせへの返信例
- 出力: 御社の文体で、回答できる範囲だけ答え、判断が必要な点は担当者に確認すると書いた返信の下書き
- 完了の条件: 担当者が読んで、手直し1〜2箇所で送れる状態
- やってはいけないこと: 納期や金額の約束、書いていない仕様の推測
ここまで言えれば、AIへの指示はほぼ書けています。同時に、新しい社員への引き継ぎ資料にもなっています。プロンプトの技術とは、結局この言語化を文章に整える作業です。
言語化の型は5つで足りる
難しく考える必要はありません。人に仕事を頼むときに言うことを、そのまま書き出します。
- 目的: なぜこの仕事をするのか。誰が、何のために使うのか
- 入力: 手元にある材料は何か。AIに渡せる資料はどれか
- 出力: 何がどういう形で出てくれば良いか。文章、表、箇条書き、ファイル
- 完了の条件: どうなったら終わりか。誰が確認するか
- 制約: やってはいけないこと、触れてはいけない範囲、守るべき文体やルール
最初から全部埋まらなくても構いません。埋まらない項目が、自分でも決めていなかった部分です。それが分かるだけで、次にAIに聞くときの指示が変わります。
社内で始めるなら
順番は次のとおりです。
- AIで試して、うまくいかなかった仕事を1つ選ぶ
- その仕事を、新しく入った人に頼むつもりで、上の5項目を書き出す
- 書き出したものをそのままAIに渡し、結果を見る
- 結果がずれた箇所を、AIのせいにせず、説明のどこが足りなかったかで見直す
- 書けた5項目は捨てずに残す。それが業務マニュアルの下書きになる
ここまでやると、AIで結果が出る仕事と、まだ言語化が必要な仕事の線引きが見えてきます。
AI導入の第一歩は、業務の言語化
アルヴァのAI導入支援では、AI導入スタートプラン(50万円・税別・目安)の最初の工程として業務の棚卸しを行います。実態は、この記事で書いた言語化を、担当者と一緒に進める作業です。ツールを選ぶ前にここをやるのは、言語化されていない業務にどんなAIを入れても定着しないからです。
プロンプトの書き方を学ぶ前に、自分の仕事を人に説明できるかを確かめてみてください。説明できるなら、AIはすでに使えます。